OVA-RW 巨鳥と弾丸

アインファルト領土に存在するアリーナ。
そこでは自らが高みを目指し、名誉と金を得るためにレイヴンと呼ばれるAC乗りが戦っていた。
観客席には、今日は珍しく同業者達が集まっていた。
尤も今回の場合は偶然ではなく、競技者の知人だからという理由で集まっているわけだが。

スーツを着て物腰の柔らかそうなサラリーマン風の男が、気の短そうな長身の女と話している。
女の方は少々不機嫌な表情をしている。そして歯切れの悪い言葉を並べて、

「……さぁ、わかりませんが。そろそろ試合が始まるようですよ」

「ん……試合ってぇと……ああそうか、今日はコルトの日か。道理で手前が。
ふぅん……ま、つってもアタシは手前と一緒にこの試合を見てるほど暇じゃないかんな。んじゃな、勝つといいなコルト」

「おやおや、帰りますか。さて、どうなるか」

そういうと、女は足早に観客席を離れていった。
男はそのことに対して気にも留めていないようで、試合が始まるのを楽しみに待つため、コーヒーを飲んでいた。

今回の試合は、クラッドクラスと呼ばれる中堅に位置する者達だった。
試合をする者達の名前は、カミカゼとコルトパイソン。
どちらもまだ若く、20代前半から後半とレイヴン全体から見ると平均的な年齢より少し下の程度だった。

二人のレイヴンが試合場に出ると、そこは円形の広場だった。
そこには、適度な遮蔽物として設定された、八角形を描くように太く大きい八本の柱が、ドームの天井と地面をつなぐようにして立っている。
ゲートを挟み、対峙していた二人。お互いの姿はまだ見えないが、確かに目の前に試合の相手がいることを確認した。
重苦しい雰囲気のする青と黒の車両型ACに乗った男は、左手を額に当てながら右手で操縦桿を握り締めて深い溜息を吐いた後、目を細め口を硬く閉じた。
対する軽量な装備をした四脚型ACに乗った女は、両手に握られた二つの操縦桿を握った指先とブースターペダルに当てられた足先でリズムを刻みんでいた。
そして、笑みを浮かべながら呟いた。

「さて、リグ君が見てるから負けられないよ」

こうして数分ほどスタンバイしていると、会場に備え付けられたスピーカーから、試合実況が大声で流れた。

「紳士淑女の皆様、ようこそ! これよりCランク、コルトパイソン対カミカゼの試合が始まります!
制限時間は5分の一本勝負! それではお楽しみください!」

その後ステージのゲートが開き、二機のACが一歩踏み出した。それと同時に、合図のブザーが鳴り響き、試合が開始した。
両者共に、ACに備え付けられた無線機のスイッチがあり、相手と無線を送受信可能にセットされている。
リニアキャノンを腕に装備し、肩にレールガンを携えた軽量四脚使いのコルトパイソンは、武器腕を構えてカミカゼに対し闘争心を露にした。

「負けないよ……!」

「お手柔らかにな」

カミカゼは相手の機体をモニター越しに凝視し、ミサイル類が装備されていないことを確認すると、すぐさまナハトアングリフに装備されている迎撃ミサイルを投棄した。
いくら重装型と言っても、後で回収できるにもかかわらず不要なものを何時までもつけている程、積載量や余剰ENを持て余しているわけではない。
カミカゼが相手の出方を窺っていると、彼女に機体スリー・ファイブ・セブンの右肩に翡翠色の光が集まり、それは一瞬のラグを置いて発射された。

「へっへへー今回だけリニアからレールガンにしたもんねーッ!」

コルトパイソンは、初撃を命中させて戦闘の主導権を握ったと思い込み、笑いながら機体を後退させもう一度狙いを定めた。
しかし、放たれた収束熱線は完全に直撃したわけではなかった。とっさに左腕に備え付けられた電磁盾を展開させ、ある程度相殺していたため大した効果は得られなかった。


観客席から眺めていたサラリーマン風の男が、青と黒の車両型ACに目を向け呟いた。
青と黒の車両型AC、ナハトアングリフとは何度か依頼の僚機として共にしている。
僚機として行動している場合でも、彼は味方の動きに対しても警戒を怠らないタイプだということを覚えている。
作戦中、彼を盾として利用したこともあったが一度失敗しているためである。

「……彼ですか。なかなかやりますね」

スーツを着て、素直に観客席から賞賛する男の後ろに、トリコロールカラーの紙袋を持って歌う女が横に座った。どうやら知り合いらしい。

「店のポップコーンは、ぼったくり〜っと。アウチ、もう始まってるじゃない。どうしてもって早く呼んでくれないの」

「知りませんよ、そんなこと。ああ、一つ貰いますよ」

紙袋の中身を口に入れ、スーツを着た男、リグ・ヴェーダに話しかける女。
彼女はシーベルトというレイヴンで、この両者はブースタークラスという上位に位置するものだ。
リグは一言断ってから、彼女の紙袋に手を突っ込みポップコーンを食べ始めた。
二人で試合を観戦していると、シーベルトは唐突に意外なことを言い出した。


「んー、あの子胸が大きいねぇ。口惜しいねー」

それに対してリグは微笑みながら、彼女の胸を見てフォローするように返した。

「胸が無いのもステータスと言いますが」

そのフォローの言葉も、皮肉でしかない。
シーベルトは、こめかみに青筋を浮かべながらリグに向けて微笑みかけたが、すぐさまその視線は二機のACへと向いた。

「嫌味のつもり? ……それはいいとして、あれ。力と技の対決ってトコかな。案外下位ランクの試合って面白いからね、楽しみだ」


試合のほうは、遮蔽物を使っての中距離での射撃に両者徹している。
両者の肩武器から放たれる収束熱線が、太く大きな柱と両者のACの装甲を少しずつ削っていった。
この隠れながらの戦い方、通常は装甲がありうまく立ち回った方が勝てる仕組みだ。
それを知っているコルトパイソンは、自分の置かれた不利な状況に苛立ちながらも、柱の影に身を潜め続けた。
両者の残りポイントを示すAPは、明らかに装甲分、重装タイプのカミカゼに分があった。
そのため、カミカゼはオーバードブーストを使い、一気に後退を始めた。
柱に隠れたコルトパイソンは、レーダーを見ながら次の取るべき手段を考えた。
もし相手が突っ込んでくるのなら、ここぞとばかりに距離を詰めて旋回性能の差で翻弄する。
相手が引いた場合なら、柱と柱を影伝いに渡り、攻めるときにどちらかの柱から急激に襲い掛かる。
そして、発射と同時に自分は流れるように横方向に移動し、相手の攻撃を回避する。
この戦術を考え、相手は引く側の選択をした。
相手も柱の影に隠れている。ACの場合、壁越しでもレーダーは見ることができるしロックオンも可能。同時に自分がレーダー照射を受けていることも計器が示している。
コルトパイソンのスリー・ファイブ・セブンが装備しているリニアキャノンは、二種類のモードがあり、今回は威力を重視するためにより高速で発射できるように電力を腕部に注いでいる。
互いにロックオンした状態で、互いの間を隔てる柱を取り除くように射線を合わせ、互いの姿が見えた瞬間に発射した。

このまま上手くいけばカミカゼに打撃を与えられると考えた。しかし、コルトパイソンの戦術で一つ大きな誤算をしていた。それは縦方向の機動だ。
カミカゼは、リニアキャノンの砲弾を電磁盾でいくらか緩和しながら防御しつつ、上方向に浮かびコルトパイソンの真上を取った。
それと同時にコルトパイソンは、飛んできたバズーカを頭部に直撃した。
高威力の弾丸が当たったことで頭部は吹き飛び、一瞬コクピットのカメラはブラックアウトしたが、すぐさまコアや腕部のサブカメラへと切り替わった。
バランサーの大半をつかさどる頭部がなくなったことで、四脚型ACの体はいくらかよろめきを見せたが、四脚特有の安定性の高さで何とか持ち直している。
コルトパイソンは、すぐさま真上にいるカミカゼへ武器腕の照準を合わせるが、ロックしている間は足元がおぼつかない。
それに上から見た状態では、いくら回避運動を取っていても上からのロックからは逃れられない。
ナハトアングリフのリニアキャノンが、スリー・ファイブ・セブンの周辺に降り注いでいった。
カミカゼは確かに数秒間の優位を得られたが、それはEN管理や熱量の問題から、そう長くは続かなかった。
やがてコンデンサの容量がレッドゲージまで達し、脚部の熱量が危険域まで上がっていることに気付き、OBを一瞬だけ準備することでトップアタック状態から逃げ出すことにした。
OBの準備中は、格別熱に対しての攻撃に弱い。そこに目をつけたコルトパイソンは、熱量重視に電力を調整したリニアキャノンをナハトアングリフの脚部へと撃ち込んだ。
如何に優れた電磁盾を持っていても、角度の問題から脚部の下までは防ぎきることは出来ない。
そのためナハトアングリフは、上から突き上げられる衝撃を受けながら高熱を帯びた砲弾に直撃し、その瞬間OBが起動したことで機体の熱量はオーバーヒートした。
突き上げられた直後に強力なGを発生させるOBを使っていることで、カミカゼは多少混乱をしたが、すぐさま計器をみて自機の状態を確認した。
OBにより離脱をしている最中、更に背後から高熱の収束熱線が襲い掛かった。
このままコアの背後に当たるものかと誰もが予想したが、その収束熱線は左肩にあるレーザーキャノンの発射機側面を直撃し、使用不能まで追い込んだ。
左肩武器が使い物にならないことを計器で確認したカミカゼは、武装解除ボタンを押してレーザーキャノンを解除して地面に落とした。
そして背後の状態から旋回して、互いに正面を向くほうに調整し、距離を取った状態での仕切りなおしとなった。
仕切りなおしと言っても時間は残り少なく、APにも差がついている。
OBによって大きく距離を取ったと思われるが、旋回する時間によってその差は大きく縮められている。
ここでカミカゼは、命中精度が比較的高く相手の動きを阻害できる右肩のリニアキャノンを使い、コルトパイソンへ接近させないように牽制をかけた。
左右に跳ねながらカミカゼのリニアキャノンを回避していくが、その間、なかなか命中精度が高い肩武器を使うことが出来ない。
ENを着実に回復させて回避運動が可能になったカミカゼに、コルトパイソンは接近できず苛立ちを隠せずにいた。

この膠着状態のまま一体どのようにすれば、カミカゼに一撃を与えることができるか。
それをコルトパイソンが考えているうちに、試合終了を合図するブザーが鳴ってしまった。
アナウンサーがスピーカーから会場に向けて、試合結果が知らされた。

「ターイムオーバー!! 両機体の残り装甲を計算した上で、判定を行います!
スリー・ファイブ・セブンはAP4317/8048、対するナハトアングリフはAP6281/9188!
よってぇ! この試合!! 勝者はぁ、カミカゼェーーーーーー!!!」

観客席の半分からは歓声が沸いてきた。
そして、リグやシーベルトがいる観客席からも叫び声が聞こえている。
肝心のリグはというと、深く溜息をつきながらシーベルトへ話しかけた。

「装甲の差がモロに出ましたね」

「ハハ、確かにその通りだね。残念残念。
ま、経験はいずれ積めるんじゃない? 頼もしい指南役がいるでしょ?」

「……はぁ、全く……っと少し席を外します。やられましたねぇ」

リグは、手に持ったコーヒーとチケットに入る力が無いまま立ち上がり、肩を落としながら観客席の近くにある階段を下りて行った。
リグが下りてから数秒後、実況とは別の館内放送が聞こえてきた。

当試合の配当は2.13倍です。勝者側のチケットをお持ちの方は、カウンターに提示し、配当金をお受け取りください。
20分後に、次の試合を……」

「2.13……大損じゃない」

コルトパイソンに賭けていたシーベルトも、今回は大きな額を賭けていたのか青い顔をしながら、観客席を後にした。


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