表向きには、特殊MT同士が一対一で戦うアリーナ。
しかし実際は、現行最強の陸戦兵器であるアーマード・コアを操り、
レイヴンと呼ばれる傭兵が、競技者となって高額のファイトマネーのために戦うのが、ケイジ・アリーナの本来の姿。
表も裏も、基本的にやることは変わりない。
ただ、一対一の試合で決着をつける。それだけだ。
戦闘技術を学ぶのは、ランカーの戦い方をみるのが手っ取り早い。
競技者としての誇りと貫き通すため、そしてよりよい戦いかたを見つけるため、
ノーランクレイヴンのヤマダは、これから始まる試合をTV中継で観ることにした。
今から始まる試合は、今回の目玉であるランカー同士だった。
フレームは平均的な中量二脚でありながら癖のある武装を使いこなすことで、
特殊な近距離戦闘を主軸とした、プライドが駆るグリーヴァ。
対するは、武器をブレードのみに絞る事で接近戦を重視した高機動四脚、コッペリアのカンタービレ。
どちらも近距離での一瞬たりとも目が離せない高速戦闘を展開するため、観客からの受けが非常に良い。
ただ速いだけではない。ランカーの名に恥じない腕前と経験からの展開が観客を魅了する。
試合開始のブザーが鳴ると、両者ともにOBを起動させて位置取り、適正距離まで一気に距離を詰める。
グリーヴァが初めに、拡散ロケットと光波ブレードによる低空からの不意打ちをカンタービレに仕掛け、
それと同時にカンタービレはマルチブースターで真上に飛んで巧みに回避する。
上空に飛んだカンタービレは瞬間的にOBを起動させ、機体を旋回しながらグリーヴァの真上を通り過ぎ、背後へと位置を取る。
しかしグリーヴァもターンブースターを起動させ、背後を取られまいと大きく急速旋回する。
両者共に紙一重で回避し、互いに背後へと回り込み合い、地上から低空のドッグファイトを続けるが、この状態は変わりそうにない。
そこでプライドは、思い切り後方に下がりながらの引き撃ちに徹することにした。
しかし、カンタービレのOBが引き撃ちによる圧倒的な優位を覆す。
B02-VULTUREの通常ブーストを全開で引いても、RAKANのOB速度からは逃げ切れるものではない。
カンタービレのブレードが、グリーヴァの左手首から先をRAIJINごと貫いて吹き飛ばす。
しかしグリーヴァは怯まず、OBで突き抜けるカンタービレの横を位置取り、ターンブースターを起動させて背後を取る。
カンタービレの横腹にショットガンを直撃させ、コア機能を低下させる。
その瞬間、旋回しながらバックブーストをかけたカンタービレは、左後ろ足でグリーヴァの頭部を蹴り付ける。
頭部に衝撃を喰らったことで、一時的に安定性能が低下し硬直するグリーヴァ。
そこへ旋回しながらマルチブースターを起動させ、グリーヴァのコアへ光の刃を突き立てようとするカンタービレ。
勝敗は此処で決したかと思ったが、光の刃は黒い獅子を貫かず、空を突く。
黒い獅子ことグリーヴァはすぐさま体制を整え、大きく左側に逸れながらバックブーストでブレードの攻撃範囲から逃れたからだ。
そのままバックブーストによるショットガンとロケットの引き撃ちをし、距離を離しながら徐々にカンタービレの装甲と防御スクリーンを削っていく。
コア機能が低下したため、先ほどのようにOBで距離を詰めての突撃が難しく、かと言ってマルチブースターを使っての突きが届く範囲ではない。
通常ならば、相手の散弾武器の威力を抑えるべく後ろに引くのが定石。
しかしコッペリアは後ろではなく、大きな円を描きながらグリーヴァの左側面へと詰め寄ってゆく。
この白熱した試合を観戦していたヤマダは、興奮を抑えながらも冷静に状況を分析しようとした。
自らが動かす状況では、なかなか冷静に考えることは困難を極めるが、他人の試合を見ているなかでは観察が容易だ。
プライドが乗るグリーヴァの状況は、頭部と左腕にダメージを負っており、左手武装RAIJINがなくなっている。
グリーヴァの残り弾数は、右腕のCR-WH01-SPが10発から12発、左右肩のWB13RO-SPHINXが各9発から15発程残っている。
対するカンタービレは、コアを中心に決して浅くはない損傷が数多くあるが、決して戦意を喪失しておらず果敢に攻め入ろうとする姿勢が見える。
ヤマダは、次に起こす双方の動きを予想してみる。
カンタービレがこのまま押し切り、グリーヴァの残弾数がなくなってしまえば、コッペリアの勝利となる。
しかし、こういう状況もありうる。
グリーヴァが完全に引きに徹し、OBで完全にブレードの射程外へ逃げ切り、少しずつ射撃武器で削っていく戦い方も十分予想できる。
ヤマダはあらゆる予想を立ててみたが、実際の行動は全て予想から外れたものだった。
グリーヴァの側面に回ったカンタービレは、マルチブースターで機体を急前進させ、グリーヴァのコアではなく脚部へ狙いをつけ、突き刺した。
とっさにグリーヴァもターンブースターを起動させ振り向き、ロケット砲をカンタービレの頭部へ当てる。
が、グリーヴァの脚部へのダメージは避けられない。
グリーヴァの脚部にブレードが突き刺さった状態で機体を急旋回させたので左脚部の膝から下が抉れ、
それと同時にロケット砲が直撃したカンタービレの頭部とコアも大きな損傷を受けた。
グリーヴァにコアダメージはないが立つ事が困難になり、カンタービレは頭部が潰れてコアダメージも大きい。
脚部を損傷したグリーヴァは、両肩のロケット砲を武装解除してブースターを小さく吹かしなんとか体勢を維持する。
カンタービレもコアから黒煙を噴いているが、まだ戦意を失わず通常ブーストでグリーヴァへと接近する。
そして、ここぞとばかりにマルチブースターを起動させ、大きく前進しながらグリーヴァへと襲い掛かる。
右腕を狙われたグリーヴァは、右手に持つショットガンと左腕を盾として使い、二振りのブレードをなんとか防ぎきることに成功した。
これでグリーヴァに攻撃手段は失ったかに見えた。しかし、グリーヴァの右手にはリボルバー型のハンドガンが握られている。
カンタービレのブレードを振り終わった直後、六発の銃弾が放たれ、カンタービレは擱座した。
ここまでの試合で約二分、長いようでかなり短い時間だ。
しかし、その短い時間でも観戦している競技者にとってはよい勉強になる。
ヤマダは携帯端末に試合の進め方と、両者の機動や戦術を自分なりの解釈で入力した後テキストデータを保存し、次の試合を待つことにした。
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