現在軽量二脚シルバーメイデンと四脚型MTヴァイスは、レッドキャニオンにあるイージス社の駐屯地で、文字通り戦争を繰り広げている。
戦争の発端となる依頼は今から1時間ほど前のことだった…
依頼名 敵施設制圧及びMT護衛
依頼主 ガーランド
敵勢力 イージス社MT(機数不明)、AC1機
場所 レッドキャニオン
契約金 20000C
成功報酬 40000C
内容 「イージス社の軍事施設攻撃を行うために運用する、MTヴァイスの護衛を依頼する。
本来なら護衛のMTを使うのだが、敵もレイヴンを雇っている。MT損傷を抑えたコストの抑制と敵AC撃破の確実性を高めるため、こちらもレイヴンを雇う事とした。
施設の制圧までMTを護衛するだけでよいが、施設攻撃に貢献したならばそれなりの報酬も考えてやらんでもない。
場所はクーロンシティ南方…レッドキャニオンの駐屯地。こちらは無駄な金を使うのは嫌いでな、MTを破壊されることのないように。
オペレーターはコストの都合でつけることが出来ない。ケイジにでもつけてもらうといいだろう。
我々が期待しているのは成功だけだ」
ガーランド社の虎の子ヴァイス5機と共にイージス社の施設を制圧するため、敵勢力のMTとこれから登場するであろう敵ACを始末するべくシルバーメイデンは戦地に赴いた。
決して大規模ではないが、地形柄侵攻は困難となっている。戦略的価値からも制圧できるに越したことは無い程度のものだ思われる。そうでなければランク外のレイヴンに施設制圧の依頼など出さない。
まだ近くに数個拠点があるのだろう。この施設での抗争など氷山の一角に過ぎない。そういうことだろうとスリートゲイザーは考えた。
5機のヴァイスは等間隔に散りながら、目の前にいる鉄騎や神盾に向けて垂直ミサイルや大型グレネードが容赦なく撃ち付けられる。
この火力があればMTの集団は何もしなくても壊滅しそうだが、特別報酬を得るために少しは施設制圧に貢献しておかないとならないため、そうもいかない。
それに小回りが利かないヴァイスは近距離に弱いという弱点を持つため、その護衛もしなくてはならない。
シルバーメイデンは空中でECMを撒きながら、後方にいるミサイルを搭載した殲撃や上空を飛行している駿風をマシンガンで撃破する。
明らかに護衛ではなく遊撃となっているが、積極的防衛と言い聞かせてヴァイスから少し離れて奥にいるMTを撃破していった。
突如巨大なレーザーがヴァイスに直撃する。中心から外れたため幸い大破は免れたが、後一撃でも当たったら間違いなく大破か擱坐する程損傷している。
ECMを撒いている為、ロックオンして撃っている訳では無いらしい。遠距離からの狙撃にしては荒く大雑把だ。それにあの威力を持つレーザーを放つのはイージスのMTでは見たことが無い。となるとレイヴンが駆るACだ。
これ以上被害を出さないようにシルバーメイデンのレーダーを確認し、レーザーを撃った角度にある赤・青・黄色の光点に接近しマシンガンを掃射する。しかしマシンガンの弾が当たるのは鉄騎や神盾といったMTのみ。ACの姿はまだ見えない。
またしてもレーザーが損傷を受けたヴァイスに直撃する。強力なレーザーを受けたヴァイスの装甲は穴が開き、そのまま擱坐した。パイロットは恐らく生きては居ない。
「MT1大破」
オペレーターが淡々と状況を述べる。一方ヴァイスのパイロット達は――
「ロバートォォーー!!」
「クッ……レイヴン!俺たちを守ってくれるんじゃねえのかよッ!?」
他のヴァイスに乗っているパイロット達が怒鳴る。しかし冷静に言い返す。
「不可抗力だ。敵は討つから安心しろ」
そう言いながら、シルバーメイデンは近くにいる鉄騎に向けてマシンガンを浴びせ、破壊していく。
ヴァイスのパイロットが愚痴るように呟く。
「安心しろ? 次にやられるのは俺たちかもしれねえのに…これだからレイヴンは信用できねぇ……」
その言葉を聴いたとき、スリートゲイザーが思ったことは
やっぱり私達レイヴンは信用されない…でも、私達も企業を信じているわけじゃないからお互い様か…
余計な事を考えないように一時的に思考を消しながら、神盾の上に飛び乗りマシンガンとハンドガンを掃射する。装甲の薄い頭上から機体を破壊された神盾はそのまま擱坐した。
思考を切り替える意味も含めて、現在APと残り弾薬を確認する。
AP 5939
右手装備 WR07M-PIXIE3 524/800
左手装備 CR-WH79H3 100/110
インサイド Syamana 8/12
敵勢力 約30%
これならAC戦でも支障が無いと、そう思った瞬間――
――――LOOKED――――
突然シルバーメイデンのコクピットにAC特有の警告が表示され、それと同時に側面から先ほどヴァイスを破壊した巨大なレーザーが降り注ぐ。
すかさず空中に飛び上がるが、シルバーメイデンの右肩を掠めてAPを削り取る。
レーザーが発射された方向に振り向くと、高台の上に敵ACの姿があった。
「なるほど…さっきのレーザーはアレか。シングルトリガーや二脚にキャノンも使いようってことか。奇襲や闇討ちには丁度良い」
目の前の赤い重装二脚を見て感心し呟いた。それと同時にオペレーターのアリアから通信が入る。
「敵ACを確認。始末して下さい」
敵ACを確認 鬼子母神です
敵は高出力エネルギーライフルを装備 極めて高火力です
遠距離からの撹乱攻撃が有効でしょう
新鋭コンピュータはデータベースから敵ACの識別コードや外装から判断し、適切な情報を伝えた。
敵は強力なエネルギー武器を装備しているので、一度たりとも命中させるわけにはいかない。そう判断したスリートゲイザーは4機のヴァイスに呼びかける。
「死にたくなかったらヴァイスは後ろに下がってッ!」
とりあえずヴァイスがこれ以上被害を受けないように、ヴァイスと敵ACがいる位置との距離を離すことを先決とした。
「テメェに命令されるのは気に喰わねえが、しゃあねえ…」
渋々ながら四機のヴァイスは後退して行く。
「ここに金蔓あり、さあアタシのヴィトンのために死んでもらうよ」
わざわざ存在をアピールするかのように宣言する。
「咲夜・ギャルスカーレットか…消えてもらう」
スリートゲイザーも公用回線を通して宣言した。最も宣言したところで消えてもらえるとは思っていないが、攻撃がシルバーメイデンに集中するようにと挑発の意味を込めて宣言した。
その直後空中でオーバードブーストを起動させ、シルバーメイデンは鬼子母神の真上を通り抜ける。
シルバーメイデンは空中を滑走したまま旋回し、鬼子母神は地上で回避運動を取りながら旋回するが、軽量級と重量級では旋回性能の差が出る。その差を生かしてシルバーメイデンは鬼子母神の背後を取り、ダブルトリガーを浴びせる。
鬼子母神はECMによりレーダーとロックオンサイトがジャミングされているため、目視でシルバーメイデンを探さなければならないが、旋回性能の関係でそれがままならない。
完全に鬼子母神の背後を取り一方的に攻撃しているシルバーメイデンだが、攻撃を受けていないわけではない。周囲にいる鉄騎の機関砲や神盾のロケット砲を受けていて、APも半分近く奪われている。
機関砲はまだ当たっても大した損害にはなっていないが、ロケット砲は話が違う。着弾することによる衝撃で機体が硬直し隙が生まれる。
1対1ならば、敵の背後をサテライト機動でロックオンさせなければよい。しかし、敵味方入り乱れている状況では後ろから撃たれかねない。今の状況がそれだ。
それでも敵ACの攻撃だけは何としても受けたくない。そして速やかにこのACを排除しなければヴァイスに被害が広がる事になる。この二点から、敵ACの効率的排除を目的としたサテライト機動をしながらMTの流れ弾に当たらないように続けるしかない。
そう決めた瞬間、鬼子母神は業を煮やしたのか突如標的をヴァイスへ変更し高出力エネルギーライフルとイクシードオービットを連射する。更に接近するためにブースターを吹かしてヴァイスへ接近する。
「させるかッ」
背後へ張り付いているシルバーメイデンも、鬼子母神を追う為ブーストを吹かしながら二つの銃の引き金を引き続ける。通常時の鬼子母神には熱暴走させるだけの熱量が得られなかったが、ブーストを吹かしている今は熱防御が低下しているため簡単に熱暴走してくれた。
鬼子母神のコンデンサ容量が見る見るうちに減っていき、チャージングにより全ての装備が使えなくなった。
「チェックメイト…今すぐ武器を捨てなさい」
男性とも女性とも付かないが、感情が感じられない声でもう一度勧告を行う。このまま倒しても良かったが、弾薬の無駄になるため一応降伏勧告をしてみた。
「調子付かないでッ」
予想通り降伏などするはずが無かった。
「そう…なら死んでもらう」
そう言うと、背後から容赦なくダブルトリガーを浴びせる。
鬼子母神から火花が散る。装甲が衝撃の許容値を越えている証拠だ。だがブーストを吹かしていない鬼子母神に熱暴走状態を維持させることはこれ以上できなかった。コンデンサが回復し、緊急冷却モードにより機体温度は徐々に抑えられていく。
死に直面したのか、鬼子母神は右手のライフルと右肩のキャノンをパージした。
「ゴージャスな生活は命あってのものよ!こんなところでアタシは死ぬわけにはいかない!」
そう言い残し大破寸前の鬼子母神は去っていった。追う気になれば追って撃破することも出来たが弾薬の無駄と護衛任務から外れると判断し、そのまま残りの敵勢力を排除することにした。
AP 3753
右手装備 WR07M-PIXIE3 158/800
左手装備 CR-WH79H3 30/110
インサイド Syamana 2/12
敵勢力 約10%
APと残り弾薬を確認し、残りの敵勢力目安を見る。残り10%なら仮にヴァイスが弾切れになっても倒せるだけの自信がある。
そう思いレーダーを頼りに敵に接近するが、ヴァイスの砲撃により接近する前に敵は大破された。
周辺にエネルギー反応無し 敵勢力の全滅を確認しました
「作戦は成功だ。これでロバートが生きていればな……」
ヴァイスのパイロットが最後だけ恨めしそうに呟く。
未練がましい男だと思ったが、そのことは口には出さなかった。
作戦目標クリア システム通常モードへ移行します
ヴァイスを一機失ってしまったが、作戦は成功と判断。成功報酬で特別減算は打ち消すことを期待。
そう思いながら、スリートゲイザーは迎えのヘリを待つこととした。
成功報酬 40000C
特別加算 0C
弾薬清算 21070C
機体修理 10982C
特別減算 10000C
合計 - 2052C
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