堅実さを売りにしていたはずのクレスト重機械製品で、一際異色な雰囲気を醸しだすこのMTスーツ用動力鋸、CR-WL71CS。
今回はこの武器について少し語ろう。
アレは構想の当時から、怪しい匂いをチラつかせていたのをよく覚えている。
一体発案した人物は、何を考えてこのような製品を量産化しようと考えたのか。
威力で言えば、プラズマガスを照射するレーザーブレードや、火薬で鋼鉄を打ち出す射突型ブレードの方が高い。
レーザーブレードは、ジェネレーターのレベルがある程度無いと使用できないという欠点はあるが、射突型ブレードにはそれがない。
そのため、攻撃範囲を優先するにしても用途が不可解なところが存在する。
極めつけに、片腕ではなく両腕を占有してしまうのだから性質が悪い。
それに生身に対して使用にしても、実戦よりも拷問に使用した方がよいのでは? という印象をこの武器から受ける。
何より、長時間の使用はスーツを着た状態で行うのだから、振動に対しても考慮しなければならない。
今回製造されるパーツは、排気量と殺傷能力が非常に高いようだが、それを金属に対して威力を期待するのは如何なものかと、
当時は思った記憶がある。
「こんなものは、使い物になるのかね?」
技術主任がこういうのは無理もないだろう。
過去に開発されたパワードスーツ用動力鋸の実戦データを元に作成するとはいえ、
パワードスーツとマッスル。トレーサーとでは勝手が違う。
現在ではアーマード・コアに匹敵する高性能なブースターという存在があるため、
近接武器を敵機に当てることが難しいのではないだろうか。
ゲリラ活動等には使えるかも知れないが、音が五月蝿すぎる。
「これは対MTや対ACに使うのではありません。火器を使うまでもない相手を、効率的に薙ぎ払うためのものなのです」
発案した本人曰く、威力よりも精神的なダメージを与えることを目的として設計の構想発案をしたそうだ。
確かに、障害物や補給車両などの低速で戦闘力がないものを目標として使用するなら使えないこともない。
しかし、金属に対しての性能は相変わらずはぐらかすようだ。
攻撃性能は保障できるらしいが、耐久性については一切口を開こうとしない。
木材を切断するときですら刃が磨耗するというのに、金属を切断しようというのだから
当然といえば当然か。
もし生身の場合はどうだろうか。
民間の林業を営む職人でも、電動鋸で事故を起こした場合にショック死しているケースが多数存在することから、
精神的ダメージの期待は相当なものだろう。
表向きの用途はバリケード及び軽装甲車の破砕とでも表記しておけば、
弾薬とコンデンサを節約するためと割り切れば悪くはないものになるはずだ。
両腕が塞がると言っても、数十機編成のうち少数の両腕を占有した所で何になる。
この武器が破城槌のような役割を果たすとしても、決しておかしくはない。
そう考えれば、この製品の売れ行きも悪くはない。そう思っていた。
尤も、現実はそう巧くいくものではなかったが。
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