男達の駄弁り場


辺り一面砂の海ばかりのザハーラ国、だが全てが砂で覆われているわけではない。
岩陰と土が存在する地帯に張ったテントの中で男達は暑さを凌ぎ、次の出撃までの準備をしていた。
テントの中にいるため照りつけるような暑さこそ感じないが、暑く静寂に包まれていた。
丁度三角形になるように座りながら、各々が黙々と自らの装備の点検などをしている中、一人の男が口を開いた。

「隆光、グエン、少し聞きたいんだがロリコンか?」

クロードの突拍子もない一言に、二人の男は噴出してしまった。
静寂の中の、意外な発言。グエンは驚きながら反応した。
口元を緩めニヤリと表情を浮かべながら、自慢げに話す隆光。

「おい、いきなり何を言い出すんだ? お前さん、なんか悪いものでも食ったか?
俺は別にそんなもの関係ないぞ」
「俺は満遍なく愛する奴だぜ。当然さ、紳士だからな。で、それがどうかしたのか?」

紳士か。それでよく紳士を名乗れるな。クロードはそう思いながらも、
それに対して突っ込むことは控え、長く暇を潰せる話を始めようとした。

「いや、別に……ここ最近はレーションばかりだ。それにと同じ様に、戦闘中でもないのにただ暇な時間を持て余すのも面白くない。
そう、まるでレーションのように味気ない時間だ。だから、暇つぶしの話をしよう。
先ほど聞いたことは、それを踏まえて話をするためだ。
それは私がここに来る前の事で、連合及び帝国の共同作戦で、幼女のMAIDを見た時の話だ」

「だからロリコンと聞いたわけか。続けてくれよ」

「あの時、私は同僚の支援を行っていて、その時にみたものだ。
そうだな……あの英雄の姿は見ていないな。それはどうでもいいか。
私がその時見たのは空を飛ぶ奴だったり、光の刃を飛ばす奴だったり色々だ。MAIDとはそういうものだからな。
その中で赤い幼女がいて、私は見て……ん? なんだ?」

クロードが話し終える前に「幼女」という言葉で、二人は話を遮り突っ込んだ。

「ロリコンはお前だろうHAHAHA」
「だろうなHAHAHA」

いつものように二人にいじられる事に慣れて来たクロードでも、やはり完全に流すというわけではない。
少しむっとしたような顔をしながらも、話を続けた。

「私はロリコンではないぞ。で、続きだ。
私は彼女の姿に不審な点があったので、見ていたわけだ」

愛用の騎兵銃に弾を込めながら、クロードは話を続けた。
別に今使うわけではない。次の出撃に備えてだ。

「なんだロリコンじゃないのか」
「遮られるのは勘弁してくれ。話しにくい」

残念そうなフリをし、内心笑っている二人のロリコン発言は今度こそ華麗に流し、本題の話を続けるために最低限の言葉で返した。
ここで無駄に返して、話を続けられなくなっても困る。

「おう悪い、続けてくれよ」

「HAHAHAHAおい、それ取ってくれよ」

クロードの隣に置いてある開いた缶詰を、隆光に手渡した。

「何の話をしていたか、忘れてしまいそうになるな。そう、帝国所属で赤いメイド服を着た幼女なんだ。
奴は何も装備を持って居なかった。強いていれば、兎のグローブをつけていたくらい。
勿論、グエンのような亜人ではない。亜人は帝国にも居たようだが、ただの人間のMAIDだ」

「素手の人間MAIDなんて、何処にでもいそうなもんなんだがね。俺でなくても。
ッ……これあまり好きじゃないんだよな」

片手でレーションを詰めながら、グエンは片手の爪を引き出して握りアピールする。
直後、缶詰を見てうんざりとし軽く舌打ちする辺り、相当このレーションが嫌いであることが窺える。

「おいおい、そんなこと言ってると俺が食うぞ」

隆光がグエンのバッグに手を伸ばすが、グエンに軽く手を叩かれる。
それをみていたクロードは、軽く笑いながら、話を続けた。

「フッ。それで、いくらなんでもあの幼女が素手で、しかも単独でGと対等に戦うのは難しいと思ったわけだ。
私も実際そう思ったのだが、そうではなかった。 彼女はGの群れに突っ込み返り血……ではないが、返る体液などお構いなしに、そうだな……まるでグエンのように突っ込んでいった。
私は奴等の返り血を浴びるなど、出来ることなら避けたいものだがな」

格闘技にあるべき型も無く、ただ獣のように拳を振るい敵を粉砕する姿は、グエンもベルゼリアも同じだった。
違うところは容姿、体格、あとは切り裂くか叩き潰すかの違いだけだ。戦闘時間など、その状況なら頃合を見つけて離脱すればいい。


「普通だろ」
「普通だよな」

あたかも当然のように返す二人。屈強なお前等ならまだしも……と言っても、隆光は銃器主体だが。
いくらMAIDと言っても、防御力は一部を除いて並外れた奴はいないし大きな傷を負う可能性は十分にある。
そのことについては置いておこう。クロードは次の言葉を考え、並べた。

「普通なのかそれは。こちらではあまりそういう奴はいなかったからな。
で、比較的小型と言っても彼女より大きな奴等だ。本当に殴り勝てるのかと思った矢先に、本当に倒してしまうのだからな。
降りかかる体液など全く気にする様子もなくやっていたのだから、グエンと同じようなタイプだろうな。
あぁそうだ。今度からGと交戦したときは砂風呂でもして、体液を落とした方がいいかも知れないな」

「おいおい冗談じゃないぜ。あのクソ熱い砂を浴びろってのか?
穴を掘ればどうにかなると思うが、戦闘後にそんな体力も残ってないしな」

掌を額に当て、うなだれるグエン。いかにも勘弁してくれという感じだ。
熱い砂に触れる感覚は、服装の関係で彼が一番良く知っている。
毛と砂が張り付くと、非常に不快な気分になる。それについては、人間以上に酷かった。

「あらかじめ、塹壕代わりに掘っておくか?」

「砂のところじゃ、崩れて塹壕なんてできねえよ。精々穴か窪みが関の山だ。
まあ、ある程度は暑さを凌げそうな穴ができると思えば、いいんじゃないか」

「奴等の死体を埋めるので、穴がいっぱいになってしまいそうだな」

全くだ。我々の入れるものではない。
そんなことを言いながら駄弁っていると、少しの間だが暑さを忘れることができる。
話の種等、探せばいくらでも転がっている。そういう意味では、この砂国も悪くはない。
丁度そのとき、テントに備え付けてあった無線機から反応があった。
数はまだわからないが敵の襲来らしい。となれば、MAIDの出番だ。

「これで私の話は終わりだ。準備できているな? じゃ、行こうか」

駄弁りながらも、準備は怠らない。
男達はそれぞれの武器や食料などを持ち、人類の敵を討つべくテントを後にした。


登場人物
ベルゼリア
グエン
隆光
クロード

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