ふと見ると一人の若い女が立っていた。
あれは……私の隊の。
そう思っていると、突然そのメードは私に向かって手招きしていたのだ。
「行きませんか」
この周辺では基地から遠く、隊の一次しのぎの場として有名なところだった。
仲間からの誘いに弱い私は、誘われるままホイホイと彼女についていった
。
彼女はかなりおしとやかなメードで、フォルトゥーナといった。
料理もかなりやりなれているらしく、テントの目の前に行くなり私達はかなり準備に手間取ってしまった。
「よかったのですか一人だけで?
私は一人でもかまわずやってしまいますけど」
「いいよ。私、フォルみたいなの好きだから」
「嬉しいこと言ってくれますね。それじゃ、とことん進めてしまいましょ」
言葉通り、彼女は素晴らしい料理の腕前だった。
私はと言うと、パトロールの疲れから準備と手伝いで精一杯だった。
しかしそのとき、予期せぬ出来事が起こった。
「……まずい」
「どうしたのですか。まだ味見には早いですよ」
「いや、実はカルが居ないから火を起こせなくて」
「いいことを思きましたわ。生のままで作りましょ」
「えぇっ!? これ生のままだよ?」
「メードは度胸! なんでもやってみるものです。結構悪くないと思いますよ。ほら、遠慮しないで」
彼女はそういうと、目の前の長ネギを細かく切り容器の中へ放り込んでいった。
生のままでネギを食べるなんて、なんて新しいやり方なのだろう。
しかし東方ではそんな文化があると聞いている。
まあいいか、今夜はカルソッツじゃなくても。
「切り終わったわ」
「えぇ、次はレーションね」
意外といいぞ。レーションの味付けには丁度いいのが分かる。
しっかり薬味代わりにしないとな。
これは……いけるか!
この初めての体験は、今まで知ることのなかった風味を私にもたらした。
レーションのあまりの味気なさに辟易し、野草を集めてきた甲斐があったというもの。
でもあまりに激しい匂いにネギを切り終わると同時に、私の気力は一気に尽きてしまった。
この分だと食事どころではないと思う。
「……はぁ」
「どうしたのですか」
「生のネギって初めてだから、なんか匂いがね……」
「でしょうね。私も始めてです。
ところで今日のレーションをみてみて。どう思う?」
「凄く……味気なさそう……」
「だから彩りをそろえるのは必要でしょ。でもこのままじゃ収まりがつかないわ。
次はこれ。えぇ、これでますますおいしそうに見えるわ」
彼女はレーションに付属されていた調味料を長ネギにかけだした。
「何? 今度はソース? 調味料があるなら、もしかしてこのネギいらなかったんじゃ……」
「あぁ……その、すいません」
「いいよいいよ、交代が来る前に早く作っちゃお」
そんなわけで、私とフォルトゥーナの料理は予定外の結果で終わってしまった。
うん、「また」なんだ。済まない。
仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。
でも、この「長ネギ」と「テクニック」というキーワードを見たとき、
君はきっと言葉では言い表せない「ウホッ! いいときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。
殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しいそう思って、この改変ネタを作ったんだ。
じゃあ、注文を聞こうか。
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