北東の下り階段から地下へ降りた。
そこには地上に劣らぬほど、いや地上以上に広い空間がそこにはあった。
何かの生き物の小さな足音がいくつか聞こえるが、姿は見えない。
まっすぐ南に壁伝いに歩いていくと、いくつかの扉に、登り階段と怪しい色をした水場が二つ、南東の塔へと続く登り階段があった。
南東の登り階段から西に壁伝いに歩いていく。左右対称かと思ったがそうではないようだ。
西側にはいくつかの分かれ道があり、まるで小部屋が複数あるかのような場所だ。
これだけではどうも要領を得ない。ドアや階段には入らずに地図を埋めてみよう。
大広間の中央には四つの小部屋、東には二つの水場と階段、それに四つの部屋。
小部屋の北にも部屋がある。四つの塔がある階段全てが一階と繋がっているようだ。
北西は登り階段だけではなく、更に地下へ行くための下り階段とドアがある。
何処から調べようか。東側四つの鍵のかかったドアを北から順番に調べてみよう。
銅の鍵を使い開錠を試みるが、四つとも開かない。鉄の鍵、若しくは違う種類の鍵が必要なのだろうか。
四つの小部屋があり、その北にドアがある。そこを開けてみようか。
ドアを開けてみると、目の前にはまたドアがあり、右手側にもドアがある。
右手側のドアには鍵がかかっていたので、正面のドアを開けた。すると今度は鉄格子によって遮られている。
ヤレヤレだ。一度引き返し、四つの小部屋を調べてみよう。
北西のドアに手を掛けたその時、「船長のねぐら 立ち入り禁止」と書かれていた。
すると、ドアに小さな隙間が開いた。そしてその後ろから、不気味な声が響いた。
「兄弟ぇ、合言葉ぁを言ってくんなぁ」
合言葉? そんなものは全く知らない。そこで俺は適当に答えてみた。
「そいつぁ違うぜ! とっとと失せな、うすのろ野郎!」
予想はしていたが、全く違うらしい。どこかで合言葉とやらを探してみないことには、ここへ入ることは出来ないな。
会話が出来る人が居るということは、この四つの小部屋はここの船長とやらの部下が居てもおかしくない。
そいつを締め上げて合言葉を吐き出させるか。
そう思いながら俺は振り返り、北東側にあるドアを開けてみる。
予想通りだ。丁度、二人の男がお取り込み中なところに出くわしてしまった。
「なんでぇ手前は?」
「乱入してくるとはとんでもねえ野郎だ」
とんでもないのはお前達の方だろう。
怒った二人は、抜き身の剣をぶら下げて襲い掛かってきた。
油断したところを先制して、突き刺してやろう。そう思い、男の一人に長剣を向けて突き刺そうとした。
しかし、その突きはかすりもせず、逆に突いたことによってスキが出来た俺は左右から左腕と胴体に向けてモロにカウンターを受けてしまった。
やはり腐っても人間、二人相手は少々どころではなく非常に辛い。
ここはどうにかして、一対一に持ち込むよう立ち回らなくては。
小部屋と言ってもさほど狭いわけではなく、長剣を振り回して戦うスペースは十分すぎるほどある。
そこで、自分と敵を直線状になるように誘い、同士討ちを狙うことにした。
腐って壊れた簡易寝台二つを挟んで自らの側面を守り、どうにかして一対一に持ち込むことが出来た。
俺の背後には壁があり、背後に回られることは殆どないはず。
簡易寝台自体の高さは膝の高さ程度のものが数段、横幅は1m程度、そのため相手のカトラス届かないはずだ。
俺は左手の盾で相手の剣を抑えつけるようにし、敵が左手に持ったダークを相手に長剣でチャンバラをすることにした。
広い部屋とはいえ、自ら狭いところに誘い込んだことが間違いだったろうか。長剣では相手が肉迫してくるので戦いにくい。
袋小路で押し合いを続け、敵が持つダークにより腕に何度か浅い傷を負うが、その代わりに剣の柄で相手の頭に向かって殴りかかった。
頭部に強い衝撃が走ったことで相手は一瞬よろめき、その隙を狙って、相手の頭部に長剣を振り下ろした。
防具をつけていない頭部に長剣がめり込み、男の一人は唸り声を上げながら頭を抑えている。そこで俺は男の腹に膝蹴りを入れて倒した。
頭に傷を負った男は倒れ、石造りの固い床に転がりまわった。
残りの男も、頭に傷を負った男に押されて転倒している。これはいい機会だ。
「おい、船長の合言葉を答えろ」
俺は無防備になった男の右腕を左脚で踏みつけ、右手のカトラスを奪い取った。
ついでに左腕に長剣を突き刺して合言葉について強い口調で聞き出した。
「イデェッ! 抜いてくれたら、答えてやらねえこともねえ……へっへへ」
「早くしろ! ……こうなりたくなかったらな」
男の痛みで歪みながらも引きつった笑みを浮かべた顔を見て、不愉快になったので殺してやろうかと思った。
が今は堪えて、おとなしく長剣を抜き、代わりにぐったりとして倒れている頭を割られた男の胸に、奴から奪い取ったカトラスを力を込めて深く突き刺した。
倒れている男には、相当な衝撃だったのだろう。大きな叫び声をあげながら、奴の右腕を踏みつけていた俺の左脚を弾き飛ばし、勢いよく立ち上がった。
墓標代わりに突き刺したカトラスを抜こうと男は曲刀手に掛けたが、俺は即座に体勢を立て直し、奴に剣を取らせまいと奴の頭に長剣を叩き付けた。
斬りかかるではなく、ただ力任せに叩き付けたといった方が正しかった。
男の頭の先から眉間の辺りまで剣をめり込んでいる。これなら不死者でもない限り生きていないはずだ。
合言葉は聞けずじまいだったが、とりあえず生き残ることは出来た。この事実だけでも満足するべきだろう。
俺は休みつつ、この二つの死体を漁ってみると、リンゴとカブ、ダーク数本を見つけた。
食料のほうはまだ比較的新しい。ということは、この城でとれた物なのか。
自分が持つ食料も無限というわけではない。どこかで補給しないと。
海賊だか盗賊だか知らないが、こいつらの仲間がここに来ないように扉に留め金をかけ、俺は体を休めた。
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