アレからどれほどの時間が経ったのだろうか? 傷薬のおかげで、傷口の大半は塞がっている……というより治りかけの状態になっている。
問題は防具だ。皮の胸当てと毛皮のゲートルは、度重なる戦闘で決して無視できない損傷をしている。
スペアの胸当てを先ほど発見したが、こうカビが生えていては直接着ると傷口にカビが入りそうだ。
塔の外でカビを取るのも悪くないが、やはりそれは危険極まりない。
早い所、この塔を降りて違うところへ向かおう。
ホールへ戻り、北側二つの塔へ向かうため、左手の通路を通って北西の塔へ向かった。
途中で右手に登り階段があるが、まだ行くべきときではない。塔の探索を終えてからだ。
北西の塔へ行くため、螺旋階段を抜けると、そこには南にあった二つの塔とは構造が違うフロアに出た。
右側に登り階段があり、左側には鉄格子がある。そして正面には右へ曲がるための通路がある。
正面の通路の先を歩いても、鉄格子によって道を遮られている。これでは多少広くなっただけで実際は変わらないではないか。
と、訳のわからないことに苛立ちを覚えながらも、行き止まりを引き返し塔の階段を登った。
突然来る敵に警戒はしても、建物そのものに対しての警戒心は怠っていたかもしれない。
螺旋階段の通路を歩いていると、いきなり天井の支え木が落ちてきたのだ。
幸い当たることは無かったが、もし当たっていたかと思うと肝が冷える。
気を取り直して階段を歩き、塔の頂上へたどり着き、早速周辺の捜索を開始した。
塔の外を見てみると、西の遥か彼方にある火を吹く裂け谷から遠い過去の遺物のように、煙の柱が立ち上っていた。
沼に火を吹く谷、この近くは随分と地形の変化が激しいな。
塔の中へ戻り、ドアを開けて小部屋の中に入ってみる。横の壁にまた出っ張りがある。
先ほどの老朽化した支え木のことではないが、スイッチを押したら床が開いてに落ちてしまうのでは、
ということに警戒しながらスイッチを押した。
すると、皮製の古い箱が壁の中から出てきた。例に漏れず、罠がかかっていないか調べることにした。
こういうときに罠の解除能力に定評のあるシーフ系が居ればどんなに楽なことか。
はっきり言って、皆目見当もつかない。とりあえず、空けた瞬間にすぐさまこの場から離れよう。
罠は箱の正面から発射されると予想し、箱から斜め方向に向かって手にかけて勢いよく箱を開いた。
箱からは白い煙が噴出し、俺はモロに浴びて体に痺れを感じてしまった。
幸い、完全に体が動かなくなるほどの酷いものではないが、暫く休む必要がありそうだ。
肝心の箱の中身は、鉄の鍵と布のシャツ、それに布のズボン。
ふざけやがって、慎重に慎重を重ねた結果、罠にかかってその上、大したものは入っていないなんてな。
体を動かすのにこのままでは苦労する。暫く寝て治すか。ドアを蹴り破られて、襲われたら死亡宣告ものだがこうなった以上仕方ない。
さっきは災難続きだった。が、本当に危機と言う訳ではない。
体も動くようになったことだし、気を取り直し次の塔を探索しなくては。
そう思い、ドアを開けたら冗談のような光景を目の当たりにした。
大きな鼠に囲まれている。いや、正確には鼠の大群が通っているところを偶然目撃し、運悪く襲われてしまったというところか。
これだけ居れば、剣を振るえば何かに当たりそうだな。そう思いながら、跳びかかってくる鼠をある程度の目星をつけて剣を振るって叩き落した。
もうこれだけ相手をするのは沢山だ。早い所ホールまで戻りたい。その一心で俺は鼠の大群から逃げ出した。
撒いても撒けなくてもそれでいい。もし追ってきても地上で相手をしてやる。そう思いながら、地上までたどり着いた。
階段の後ろを見ても、鼠の大群はいない。足音も聞こえない。それを確認すると、通路をまっすぐ突き当たるまで歩き、北東の塔へいくために階段を登った。
階段を登ってみると、北西のフロアと似たような構造をしているが、正面の細長い通路がない。
その代わり、鍵のかかったドアがある。今もって居るのは銅と鉄と羊の彫刻の鍵だ。
まず銅の鍵を使ってみたが、鍵穴が合わない。次に鉄の鍵を使ってみた。
部屋を覗いてみると、二人の男が木箱を枕代わりに寝息を立てている。
ここは殺すべきなのか。殺さずに放置しておくべきなのか。とりあえず、下に落ちている銅の鍵だけ拾って足早に去ろう。
この狭い部屋の中で面倒を起こすのは御免だ。自ら手を下さずとも、ここの獰猛な生き物とやりあって生涯を終える可能性があるのだから。
それに、今の俺はあの狭い部屋で戦うための武器がない。先ほどのカトラスも、何時の間にかなくなっているしな。
今は出来る限り、体力を温存したい。どこか安全な場所で休まないと、疲れて仕方がない。
塔の頂上の小部屋があることを見越して、そこで寝ていたい。後、腹が減っているのも少し気になる。
あれだけの荒くれが居るということは、どこかに食料があってもおかしくないはずだ。
運がよければ、どこかから手に入れることが出来るはずだ。どうしようもなくなったら、鼠や蝙蝠でも食うか。
そんなことを考えながら、塔の頂上を目指した。
予想していたと通りの構造で、ドアが付いた小部屋を中心に螺旋状の通路と外に出るための出口が三隅にある、
早速、俺は通路を通りドアを開けて先客が居ないか確認した後、部屋に閉じこもってザックの中の干し肉に手をつけることにした。
城に入って何時間経過したかはわからない。何度も休憩を取っているが、一回の休憩にどれほど時間を費やしたのかもわからない。
唯一ついえることは、一度も塔の外で日が暮れた風景を見ていないということだけだ。
出来ることなら外で気を抜いて寝ていたいが、こんなところでは明らかに自殺行為か。
早く帰って、安全な町の屋上で寝ていたい。そう思いながら俺は小部屋で体を休めることにした。
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