ウィザードリィ6リプレイ24

渓谷を抜け、フック付きのロープを渡り、城へと戻ってきた。
薬を買うためクィークェグのところへより、粉を買うためにル・モンテスの所へ寄った。
少なくとも、目潰しと眠りの粉は絶対的な生命線だ。これを切らしてしまうと、後はどうすることも出来ないだろう。
そう思い、有り金を全てはたいてまで持てる限りのものを持つようにした。

地下二階にある髑髏の扉に宝石をはめ込み、魔法使いの指輪を使って鉄格子を開いた。
鉄格子の先にあるドアには、次のように書かれていた。
「魔法使いの住処 ネコに注意」
中に入ると物音一つせず、極めて平和そうだった。
しかしそれは、地獄から悪魔ネコがやってくるまでの話だった。
魔法の力によって体が点滅し、非常に素早い動きで背後を狙ってくる悪魔のような緑色のネコが目の前にいた。
相手は炎を吐きつつ、此方の背後を狙いながら引っかいてきた。
炎は小さなものだったが、大剣のみでは防ぎきれず、鎖のホーバークまでも焦がしていった。
その素早い動きに翻弄され、炎の力で鎧を熱せられたことによって受けているダメージは小さくは無い。
目潰しや眠りの粉を投げつけても、点滅する効果からか当たることがなかった。
どうやら、点滅することで現れた瞬間は攻撃が通じるが、奴自身が素早くてなかなか当たらない。
いつものように突き刺す攻撃では、奴の素早い動きに対応できない。
そこで俺はあえて敵の直接攻撃を待ち、それに対して反撃を試みることにしてみた。
炎は出来る限り大剣を使い防御、更に自分の力でかわしてダメージを最小限に抑え、爪で切り裂くように突っ込んでくるのを待った。
相手が攻撃してくる間は、点滅する力が消えて通常の相手と同じ様に傷を与えることが出来る。
ついに相手は左右に跳ねながら前進し、此方に直接攻撃を仕掛けてくるようになった。
迫り来る爪を正面から受け止め、同時にこちらも大きな剣を相手の眉間を狙って振り上げた。
人とネコとの相手だが、それはまるで騎士の馬上試合のようだった。
相手の爪は鎖のホーバークとマントを切り裂き、こちらの大剣は相手の頭部へ食い込んだ。
俺は爪による傷よりも、爪からの強い衝撃によって胴体にダメージを受けた。
躊躇うことなく仕掛けた攻撃は、確かに悪魔ネコに致命傷を与えることになったが、自分自身にもそれは跳ね返ってきたようだ。
頭の割れた悪魔ネコはその場で崩れ落ち、部屋からは物音一つしなくなった。
確かこの部屋には、呪文が隠されているとあの蛇から聞いた。
その呪文がなんなのかは分からないが、今はそれを後回しとしよう。
胴体に受けたダメージを回復させなくては、その後に支障が出る。
幸いにも四肢は全て動き、胴体以外にダメージはない。
そこで俺は薬を使った後、この部屋の中で崩れ落ちた悪魔と共に暫くの時を過ごした。

休んでいるときに部屋を一通り見渡すと、四つの箱が置いてあるのを確認した。
休む前にいた頭の割れた悪魔ネコは、依然変わらず崩れ落ちたままだ。
再び動き出すことが無いように首を刎ねておき、俺はその四つの箱に手をつけた。
箱の中には、魔法の書物や巻物、それに日記と塔の鍵を見つけた。

早速日記を読んでみることにした。
魔法使いの日記には、次のようなことが記されていた。
星の月 17の日
ついに、死体再稼動の実験で成功を収めた!
哀れな実験台は、牧師に連れられてやってきた女で、かの悪魔娘の淫らな母親だった。
死んでからもう三日も経っていながら、その女はもう一度息をし、歩き、見ることが出来るようになった。
これで心や魂まで再生することが出来ればよかったのだが、残念なことにその方法はない。
女は今や抜け殻だ。何か処置の方法が見つかるまで、女は城の塔の一つに閉じ込めておくことにする。
兎に角この成功を糧にして、次なる実験台が現れるのを待つとしよう。
星の月 23の日
ついにこの間、打ち首となった気の触れた牧師は、私の最新のテーマである霊体分離にとって、素晴らしい実験となった!
かの者の首に斧が振り下ろされたまさにその時、私はその魂が、この世から離脱できないように呪文をかけた。
かの者の心と魂を捕らえることができたことで、私のアイディアが間違っていないことが確かめられた。
生と死を思うが侭に操り、不死を得られるようになるのも、そう遠い先のことではないだろう。
そのときまで、"霊封じ"の力で牧師の霊は城のもう一つの塔に閉じ込められる。
どこかの愚か者が間違ってこの霊を解き放ったりしないように、鍵はここに隠しておくとしよう。
月の月 4の日
ついに我々はコズミック・フォージへ通じる隠された門を発見した!
これでペンまで後一歩だ!
すぐに旅立ちの支度をしなければならない。今夜、我等は飛ぶのだ!
月の月 13の日
フォージを盗まれた!
私のずるがしこい弟子、ミスタファファスの姿が見えない。
どこかにいるらしいという手掛かりすらない。
呪文を使って所在を突き止めようとしたがダメだった。
何度矢っても、あの食い過ぎの蛇の巣にいるという結果しか戻ってこない。
アレに食べられてしまったと考えるしかなさそうだ。
月の月 16の日
いよいよ"ペン"で何を書くかを決めた!
これで私は、王を終わらざる死へと誘った呪いから逃れられるはずだ……今夜、私はわが運命を刻み込む!
それが最後の文字だった。本には白いページが続いていた。
読み終わると、日記の綴じ代が解れ、バラバラになってしまった。

部屋の横には何かのボタンがあり、押してみるとその先には倉庫があった。
物置の中を覗いてみると、隅のほうに曲がった杖が置き去りになっていた。
明らかにその存在自体が忘れられていたらしい。
これは使えるかもしれない。俺はその杖を手に入れ、横にあったスイッチを押して更に奥へと進んだ。
すると、また変わったものが置いてあった。
テーブルいっぱいのポーション、ビン、その他の薬品の山は戻ることの無い主のことをじっと静かに待っているかのようだった。
容器のうちいくつかは壊れておらず、よく密閉されていて、中身も悪くなかったり黒い塊になったりしていなかった。
テーブルの上にはその他に奇妙な小さい木の棒があり、その片方の端は赤く塗られていた。
確か、魔術師だったか錬金術師というのは薬を混ぜて火をつけていたような気がした。
何の知識もなく薬品を混ぜるということは非常に危険だったので、混ぜることはしなかったが、物色してみることにしてみた。
赤、青、緑の薬に白い粉、それにこの赤い棒。この赤い棒は一体なんなのだろうか。
手甲越しに触れてみても別段何も起こるわけではない。白い粉につけてみても何か起こるわけでもなかった。
しかし、白い粉につけてから何かの摩擦があったのだろうか。それは勢いよく燃え始めた。
これは非常に不味いことになった。無闇に火を消すより退避した方がいい。そう思った俺は背を向けてドアを開けた。
その時、後ろで爆発音がし、何かの破片が俺の体や後頭部に当たった。
後ろを振り返ってみると、そこには壁に穴が開いていた。
その階段には見覚えがあった。下ってみると、採掘場に繋がっていたのだった。
思いがけないショートカットが見つかったが、今思うと軽率な行為だった。
安全を確保してから出ないと、こういうものは使ってはいけないな。

塔の鍵か……やはりあそこで使うのだろう。
そう考え、俺はアラム城の一階にある中央ホールの水のみ場近くにある右側の階段を上り、鍵を使って鉄格子を開いた。
この塔は二つあり、一つはあのクロームの鍵があった部屋にいたゾンビ、アレが悪魔の娘の母親だったのか。
そして、この塔には牧師の霊、それは解放しなくてはいけない。何故かそう思い俺はスペードの鍵を使い最上階の扉を開いた。
部屋は空虚で静まり返っていた。恐らく100年以上もの間、ここには誰も入ったことがないのだろう。
相して部屋を眺め回していると、なにやら奇妙な光が部屋の中央に集まり、人型を形作り始めた。
程なくして、年老いてしなびた顔が見分けられるようになると、それは話し始めた。

「ハロー? ハロー?? アニー、君かい?
見えないんだ、アニー……アニー、聞こえるかい? アニー?
アニー、どうして答えてくれないんだい?
私を忘れてしまったのかい? アニー、覚えていないのかい?
私が誰なのか、覚えていないのかい?
私は……私は誰なんだろう……覚えている……そうだ忘れないぞ、ずっと昔、私は……
聖なる職に就いていた。信心深く、人々から崇められる者だった。私は覚えていない……
いや、覚えているぞ! アニー、愛しいアニー、ああ、アニー! 私達は道を誤った!
私は君との神聖な誓いを破った! 愛しいアニー、私は罰を受けた! 罰を受けたのだ……
私達の娘! この娘をどこかに隠さなければ……奴等がやってきて、この娘を連れ去ってしまう!
やめてくれ! その娘は悪魔なのだ! 彼女は罪によって齎された……アニー、私達の罪のせいなのだ!
この娘は呪われている! そして我等もまた呪われている……ああ、愛しのアニー……
王様に見つかった! 王があの娘を連れて行ってしまう!
だが彼ならあの娘を守ってくれる……アニー、彼なら我等も守ってくれる……
遠い遠い昔だ……アニー、もはや私は居ない……
だが角笛は持っているぞ! 忘れはしない、首の周りの寒気……そして光……
私は光に向かって歩いていた……ああ、それなのに、何かが私を引き戻す!
何かが、私が光へ進むのを邪魔している……手だ! 光から伸びた手が私に何かを持ってきてくれた……
角笛だ! もう時間かい? アニー、もう時間なのかい? 角笛を吹くときなのだね?
アニー、今行くよ! さぁ、これから角笛を吹くよ!」

亡霊は暗い色の角笛を持ち吹き鳴らした。

「アニー、光が見えるよ! 私のために光が戻ってきた!
サヨナラアニー、これから光のほうへ行くよ……」

亡霊は突然消滅し、暗い色の角笛が大きな音を立てて床に転がった。
俺はそれを拾い上げ、周囲に何もないことをもう一度確認した。
不要なものは処分できたと思ったら、また余計なものを拾い上げてしまったか。
しかし、これは必ずや何かに使う。そう確信しザックの中へ入れた。
相変わらずザックの容量が不味いことになっているが、これを解消する手段は今のところ見つかっていない。
当初の目的を達成することはできたので、ピラミッドへ探索を続けることにした。


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