再度洞窟に戻り、スミッティーに不要物を売り払った。
あんな魔法効果の無いアクセサリーは、邪魔になるだけだ。
妙なものを渡され気分が悪いのは、仕方ない。
探索を続けていくうちに忘れるだろう。
洞窟の地下一階から、また潜ってみたが……またただのトンネルだった。
何かあるに違いない、そう思いトンネルに手を当てて調べながら探索してみた。
しかし、存在したのは手甲越しに伝わるゴツゴツとした質感だけだった。
最も南にある階段を下りると、その先は真っ暗闇だ。
壁に手や剣を当てていくと、正面は行き止まりで左右に分岐されていることがわかった。
右へ向かってみると暗闇は晴れて水場とランプの付いた部屋に出た。
この水場は、鉱夫たちが使っていたものだろう。
幸いにもまだ機能している上、毒も無いことがわかった。
ここで休憩しよう。そう思い、剣を置いて水場の傍で横たわった。
休憩を終えて、探索を続けることにした。
階段のところで分岐されていた暗闇の先を歩いた。
暗闇の最も奥は、デッパリのついた壁だった。いや、壁ではない。何か違う素材でつくられたものだ。
そう考えた俺はそのデッパリをつかんで捻った。それはドアだった。
暗闇の中でドアがあると、全くそれはわからない。
一歩遅かったら、引き返していたのかもしれない。
そう思いながら、俺はドアを開けた。
すると、突然先ほどの青い植物が襲い掛かってきた。
少なくともここを含めると、三箇所はこの青い植物を見ている。
俺はこの青い植物の対処法を知っている。
直線的に噛み付いてくるが、それを避ければ体が伸びきりスキが大きくなる。
その瞬間を狙い、俺は青い植物の触手を大きな剣で叩き切った。
どうやら伸びているときに叩ききると、普段より大きくダメージを与えることができるようだ。
少し裂け目が出来ている。もう一度俺は同じ様に相手が伸びるのを待って、近い場所を叩き切った。
ある程度千切れていくと、この植物は予想通り崩れ落ちていった。
俺はゴムを採取するために、足で触手を押さえつけ、大剣を使い真っ二つにした。
そして、持っていたゴムとゴムを組み合わせた。
このようにして探索を続けていくうちに、やっと長い通路がある部屋や、下へ降りるための階段を見つけた。
下るのはまだ早いので、この地下二階を探索してからだ。
俺はここで五つの下り階段を見つけた。
恐らくこれで探索はし終えたので、一番近い左下の下り階段を使ってみた。
すると、またトンネルのような通路があり、上に登る階段を見つけ登ってみた。
一体ここはどれだけ入り組んで入れば気が済むんだ。
そう思いながら通路を歩いていると、そこには大きな出っ張りが壁に張り付いていた。
いっそのこと、洞窟の壁全てが一つの通路になってくれと願いながらボタンを押したが、そうはならなかった。
ただ金属の箱が出てきただけである。箱を開けてみると、そこにはハンマーと"のみ"を見つけた。
これを使って壁に穴を開けて、自分で開通しろというのだろうか。
それをするなら、この"つるはし"でなんとかしてやる。
半ば自暴自棄になりながら、探索を続けていった。
この探索をしていて思ったことは、非常に階段の上り下りが激しく、ただ探索して周るだけでも休憩を挟まずには居られない。
その上非常に階段が多いため、一体何処を下り、何処を登ったのかいまいちわからなくなること。
几帳面にマッピングしていない限り、迷いに迷ってしまうこと請け合いだ。
それはいいとして、俺は地下最深部と思われる場所に巨大なダイヤモンドの壁を四つ発見した。
部屋への入り口は、巨大なダイヤモンドの透き通った壁によって遮られていた。
そしてその内側に、今までに見たことも無いような奇怪な表情が浮かび上がっていた。
ダイヤモンドの内側で蠢く、その頭の様子から、どうもそれが単なる幻影ではなく、実際に何らかの魂が巨大な宝石の中にとらわれていることがわかった。
壁際に近づいてくるたびに、何かを語りかけようとしてくる。
そのダイヤモンドの壁面は四つの方向にあり、通常の武器では傷一つ付かなかった。
ただ、先ほどの"のみ"を使うことによってのみ、その壁面に裂け目が出来た。
しかし、それは砕け散りはしなかった。
俺は何度も階段を上り下りし、そのダイヤを売り捌くために四方向から穴を開けてダイヤモンドの壁を突いた。
そうすると、ダイヤモンドが砕け散った。残念なことに、砕けた破片はまるで空気の中に溶け込んだかのように、煙だけを残して消えうせた。
しかしその直後、奇怪な表情をした何かが完全に姿を現し此方に対して一方的に語りかけてきた。
「ついに自由だ! お前のことは知らぬ。
しかし、全てが始まったときから、お前が来ることだけはわかっておった。
わしに残された時間は短い。見ての通り、わしの体は遠き昔に滅びさった。
こうしてここに留まれるのも、昔のわしの力があってこその話。
しかしそれも、もはや費えようとしておる。
それ故大事なこと、お前の捜索の足がかりとなることだけを話そう。
一つの物語じゃ。お前、そしてお前の後に従うものたちへの警告とするがよい。
わしはゾーフィタスとして知られた魔法使いの半身じゃ。
お前の目の前にある骨、それが元はゾーフィタスだったのじゃ。
百二十年ほど前、わしはコズミック・フォージの探索に携わっておった。
災いを齎すペンとして、この世界の全ての仕組みを書き表すために用いられたものじゃ。
ペンの話をするには、そのペンが盗まれた聖なる祭壇、即ちサークルの話をせねばならん。
ペンの力を開放せぬために、ペンは聖なるサークルの内側でしか使ってはならぬ、という規則が書き記されておった。
サークルからペンを取り出し、その規則を破るためには、どうにかして例外を作り出さなければならなかった。
ペンの力を開放し、更に書き記された規則には反しないような例外が必要だったのじゃ。
そこで、恐るべき例外が作り出された。
即ち、もしサークルの外でペンが用いられた場合、それを使って何かを書いた者は、まさにその書き記したことを自らに対する災いとして受ける。
そして、災いは新たなる世代が過ぎ去るまで、百と二十年の間そのものを苦しめ続け、その後に開放のときがやってくる。
ペンをサークルから取り出すために、この災いを呼ぶ例外が作られたのじゃ。
こうしてわしの骨がここに横たわっているのも、わしの行いによる災いの結果じゃ。
しかしその災いのときは、お前がここに来てわしを解放することによって過ぎ去ろうとしておる。
さて、聞くがよい。遠い昔に起こった事件の経緯を。そして、この先お前が賢く、正しく振舞うための手がかりとするがよい。
わしはゾーフィタス。魔術と力を持った偉大なる魔法使いじゃった。
一度力を持ったものの常として、わしはその甘美な味に酔いしれ、味わうほどに更なる力を渇望するようになった。
それが故に、わしはわしと同じほどの渇望を持つ者と汚らわしき同盟を組み、二人して世界の支配を夢に描いた。
かのペンの噂を聞きつけたとき、それを手にすることで我等の勝利が不動のものとなることは明らかじゃった。
そこで我等は、コズミック・フォージを手にするための計画を練り始めた。
しかし、ペンをサークルから奪い去ったまさにその時、我等は災いが直ちに降り注ぐということを知る羽目になったのじゃ。
かつてゾーフィタスであったわしは、この運命を逃れようと決意した。
そして、死せる定めの魔法使いゾーフィタスなる者が宇宙の全ての物事を知り、それによって恐ろしい破滅の宿命から逃れる術を学べるようにと、かのペンを用いて書き記したのじゃ。
確かにわしは全てに関するあらゆる知識を手に入れた。
そしてそれが故に、わしは二つの別々の生き物に切り離されてしまった。
この世界の全てのものは二つに分かれる性質を持っておる。あるか、ないか、その二つの状態が共存せねばならんのじゃ。
ところがわしは、この世の全ての知識を一つのものとして手に入れてしまった。
わしは全てを知り、同時に何も知らぬ状態でなければならなくなったのじゃ。
そしてわしは二つに分かれた。"善"を知るものが"悪"をも知るが如く。
知ることが出来るものは、全て二つに分かれる。
そして分けることが出来ないものは、決して知られることはない。
人は永遠に知ることを捜し求め、それ故に散り散りに別れていくのじゃ。
これぞ知識の本質、そのありようでお前の心の中でもそれに変わりは無い。
何かを知るとき、考えるとき、信じるとき、心に話しかけるとき、その仕組みがどうなっておるのかは、これとなんら変わりはしない。
残された時間は僅かじゃ。しかしまだ告げなければならぬことがある。
ゾーフィタスであったわしは死んだ。
しかしながら、わしの半身、いまひとつのゾーフィタスは死んではおらん。
そして、わしがお前を助けたようにもう一つのわしはお前を苦しめるじゃろう!
かの者の知識は完全ではない。何故ならその半分はわしが持っているからじゃ。
かの者の歩みは頼りなく、常に半分は正しく、半分は誤っておるじゃろう。
精神は暗く淀んだ水溜りの中を漂っているに違いない。
わしのごとく、かの者もまた気が触れておろう。
しかしお前はかの者を見出さねばならぬ。
何故なら、わしがそのペンと理由を知り、お前に語ったように、かの者は"場所"と"時間"を知っておるからじゃ。
だが"それが何か"は知らぬ。それはお前が、かのものから見つけ出さねばならぬじゃ。
コズミック・フォージの宿命、運命の手とペンはかの者と共にある!
これでわしは自由じゃ……」
そして幻影は消え失せていった。
ここまで長い話を聞かされたが、要約してみよう。
このゾーフィタスの半身は、二つに別れてこの先、俺に襲い掛かってくるだろうってことか。
噂に聞いた魔法のペン……迂闊に手を触れない方がいいのかもしれない。
しかしこの探索を今やめても、脱出することが出来ない状態ではどうしようもない。
ペンを手に入れるか、それ以上の価値のあるものを見つけるか。
そして、見つけた後はこの城一帯からどうにかして脱出しなければ、割に合わない。
しかし、どのようにしてこの城から出ようか。
先に進んでいけば何かあるかもしれない。
そう思い、俺はゾーフィタスの亡骸から代物を手に入れた。
魔法使いの指輪に鍵、魔法の杖に魔法の本が亡骸から見つかった。
魔法の本は、怠け者の書と表紙に書かれている。妙なものだ。
そういえば、ここには複数の鉄格子がある。鍵を使ってあけてみるのもいいかもしれない。
そう思い、最深部から地上へと足を運んだ。
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