ウィザードリィ6リプレイ14

クィークェグの店を後にし、もう一度船長の部屋へ向かった。
ドアに小さな隙間が開いた。そしてその後ろから、不気味な声が響いた。
「兄弟ぇ、合言葉ぁを言ってくんなぁ」
俺は「スケルトンクルー」と答えた。
すると、「あたりだぁ」と返し鍵を開けた。

「はいんなぁ」

どうやら俺を入れてくれるようだ。
そこは小汚い部屋だった。
煙がもうもうと辺りに立ち込め、いくつものテーブルの周りには、エールのビンや泡立つビールを持った無法者の群れを成していた。
盗賊、追いはぎ、山賊、海賊、人殺し、一つ屋根の下にこれだけの凶悪な者共が集まったことは、今だかつてなかったであろう。
部屋に入っていくと、全ての動きが止まった。視線がこちらに集中し、死のような静けさが辺りを包む。
それぞれのテーブルをさっと眺めただけで、金貨の山、トランプ、サイコロのところにかけてあるチップなど、様々なものが目に入った。
そしてそういったものの一つ一つ、汚らわしい顔の全てがこちらをじっと見つめていた。
絶体絶命と思ったまさにその時、周りの何かがピンチを脱する手がかりになったという経験が無いわけではない。
今がまさにそのときである。
辺りに視線をめぐらす。いくつもの顔、厚い煙の壁…と、その遥か彼方、鉄格子の向こう側になにやら奇妙なものが居るのが目に入った。
しかめっ面にひねくれた笑みを浮かべ、赤い燕尾服、白いひだ付きのシャツ、青い半ズボン、黒い帽子、60センチもある長い巻き毛の黒髪といういでたちの人影が、その合資の向こう側にとらわれていたのである。
男は片目を黒い眼帯で覆い、肩には緑色のオウムのぬいぐるみを置き、顔には奇妙な表情を浮かべている。
しかし、何よりも一番目を惹いたのは男の右腕だった。
その本来なら右手があるところには、磨きこまれた金属製の鍵爪がついていたのである。


突然、目の前に異様な臭いをさせ、脂ぎったカエル面の太った男が立ちはだかり、空想の時間を大きなげっぷの音で遮った。

「おいらぁマティー船長だぁ! ちっと待ったぁ、うすのろぉ!
新入りはぁ勝負に勝たねぇ限りぃ仲間には入れねぇんだぁ!
勝負の方法はぁ二つだぁ。御馴染みの戦いかぁ、もうちっと文化的な奴、そうよ、飲み比べ!
戦うかぁ、それとも飲み比べかぁ?」

こんな奴等と穏便に済ませるつもりなど毛頭無い。答える代わりに長剣を相手の鼻先に突きつけた。
それに怯むことなく、船長は戦闘に応じた。

「じゃ、いっちょやるかぁ! たたんじめぇな!」

相手が一人でもお構いなしということか。船長は海賊共をつれて戦いをはじめた。
まずは手下の海賊に眠りの粉を投げつけ、行動不能に陥れてから始末する。
船長はカトラスを振り回しながら斬りかかって来るが、この寝ている部下を斬り殺すまで船長の相手はできない。
そこで俺は、目潰しを投げつけて船長を怯ませた。他とは違い、そう簡単に引っかかってくれないところが腐っても船長なのか。
船長が怯んでいる隙を狙い、部下達の首を長剣で切り裂いた。
部下の首から大量の血が噴出し絶命しているのを横目で確認した後、船長との一騎打ちに持ち込んだ。
ヘタに接近することは避けたいが、接近しなければ優位を取ることが出来ない。
そこで俺は、鉄の盾を構えて背後を奪うために相手とすれ違い、即座に反転して斬り付けた。
相手との図体を考えて旋回速度で上回っているので後ろを取れるだろう。そう考えたが甘かった。
確かに相手の腹部に裂傷を与えたが、自分も船長のカトラスで薙ぎ払われ、相手と同じように裂傷を受けた。
しかし相手との違いは防具にある。俺は鎖のホーバークと皮のゲートルで覆い、それにクロークを羽織っているため裂傷に対して多少の抵抗力がある。
が、相手はほぼ上半身は裸だ。相手と自分の体力が同等という前提で考えると、間違いなく勝てる。
しかし、自分と相手の体力が同じである確証はない。まあいい、仮に相手の方が多くても此方には傷薬を複数携帯している。
そう滅多なことで負けることはないだろう。
そのように考えながら、傷薬を取りだして使用した。裂傷は多少治まったが、完全ではない。
傷薬を使っている間も、容赦なく相手は襲い掛かってくる。相手が振るう鉄の塊を、こちらも鉄の板で受け流した。
攻撃を受け流したことによって、多少の相手にスキができる。そこを狙って長剣を船長の横腹へ突き刺して引き裂いた。
やはり脂肪分が邪魔をして攻撃が上手く通らない。相手は裸だが、天然の鎧をつけていることとほぼ変わらないことがわかった。
何度か此方に剣を振ってくるが、長剣と盾を使い何とか回避し続けることに成功した。
反撃として、17ポンドもある大きくて重い鉄の盾で頭部を殴りつけてから長剣で腹部を突き刺した。
船長は頭部に強い衝撃を加えられた後、わき腹から夥しい量の血と脂が吹き出て、全身から脂汗を流しながら倒れた。

テーブルの周りに居る無法者達は、俺たちが戦っている間、それを楽しんで観戦するものや賭けの対象にするものも居た。
中には興味がなさそうに横目で見る程度のものや、完全に無視して他の賭け事をしているものたちがいた。
一部のもの以外は船長が倒れた瞬間、口を開いて驚いていた。
ほんの一部のものは自分達の世界に入り込んでいたり、賭けの対象を俺にしていたのか狂喜していたものがいた。
俺は船長の死体を横目に、銀の鍵を使って鉄格子を開けた。
鉄格子の中の、鍵爪を持った海賊の死骸は近くから見ると更に一層気味悪く感じられた
。 鉄格子に鍵が掛けられているのには、それなりの理由があった。
というのは、その死骸に触れた途端、灰と骨の山になってしまったからである。
後には、燕尾服、帽子、オウムのぬいぐるみ、眼帯、そして光り輝く鍵爪しか残っていなかった。
全てを懐に入れたいところだが、ザックの容量にも限界はある。そこで比較的珍しくて小さい鍵爪とオウムのぬいぐるみを入れることにした。
何故荒くれの長である海賊の船長が、このようなぬいぐるみなど持っているのだろうか。何かこれに執着している理由でもあったのだろうか。
ル・モンテスのスヌープチェリといい、このオウムといい、ここの連中は一体なんなんだ。
そう思いながら緑のオウムを掴んで調べてみると、背中に小さな宝石がはめ込まれているのを確認した。
何故このようなものがあるのだろう? これも特別な力を持つ代物なのだろうか。
そう思い、試しに力を解放するために念じてみると、俺自身に何かの力が漲り、オウムのぬいぐるみは粉々に砕けてしまった。
手元に残ったものはフックのみ。これを見て思ったことは、先ほどの渓谷で見たフックが付いたロープだ。
ザックの中を調べてみると、まだ使っていない鍵がある。スペードの鍵と鐘楼の鍵。スペードはあの塔の片割れだろう。
鐘楼の絵が描かれた鍵は、大きな吹き抜けがあり鐘がある塔に使うものだろう。
早速、俺は不用品を整理した後に地下を出て、鐘のある塔へ向かった。


ウィザードリィ6リプレイ15
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