現在行けそうな未踏破地区は、一階にある水場の近くにある二つの階段だ。
まずは左の階段から登り、スペードの模様がついた黒い扉を同じ模様の鍵を使い開いた。
扉を開けた瞬間、酷い悪臭を放つ動く死体が襲い掛かってきた。
接近するだけで吐き気を催すが、我慢しなくては。
ゾンビに目潰しが効くのかわからないが、試し半分で使ってみた。
見たところ効いているのか効いていないのかわからないが、敵は見当違いな方向を向いて暴れまわっている。
一応効いているようだ。頭の側面を盾で殴り、剣を振り下ろして少しずつ腐った肉と骨を削り落としていった。
死体だったものが動かなくなってから、周囲を見渡した。
塔の中のベッドやテーブル、椅子などは長い年月を経ていながら殆ど元の状態のままだった。
ベッドの上には、古い毛と腐った肉片が残っていた。恐らく先ほど倒した死体のものだろう。
奥には金属で装飾された箱がある。こんなものにでも罠はかかっているのだろうか。
そのようなことを思いながら、逃げる準備をして宝箱を開けた。
すると、亡霊の手が実体化した。亡霊の手が打ち振られ消え去った。
亡霊に命を奪われずに済んだのだろうか。
空いた箱には銀白色の鍵が三つ、スカルキャップ、花火、痒みの粉が入っていた。
これは困った、銀白色の鍵すらザックに入れることが出来ないほど荷物に余裕がない。
薬に鍵、粉に重要だと思われる品物……この中から何かを捨ててしまおう。
装備はもとより目潰しや眠りの粉、傷薬は捨てるわけにはいかない。
鍵や重要だと思われる品物もだ。痒みの粉が一番捨てても惜しくないな。
荷物の中身も整理しよう。以前このような話を聞いた事がある。
特定の装備品の中には、ものの力を解放して力を得る代わりにそのものは砕けてしまう、と。
装備して祈りをささげることで効果が発動するようだ。
紋章の盾の力を解放し、盾は粉々に崩れ去ってしまった。
確かに力が少し強くなった気がする。
苦肉の策だったとはいえ、盾を失ってしまったことは非常に辛い。
そして片手剣では少々心もとない。こんなときこそあのバスタードソードがあればよかったか。
まあいい。左手に持つ物は後に手に入る。
そう思いながら、一旦クィークェグのところで不要物の処分をし、二階のまだ開いていない扉の前まで歩いた。
銀白色の鍵、やはりここで使うものだったのか。
二階に上がり、北にあるドアを開いた。
その部屋の壁は、天使や薔薇や蔓草を彫った雪花石膏で飾られ、
歳月を経て石膏はどす黒くなっていたが、その見事な細工は真に印象的だった。
大の男三人が横になってもまだ余裕がありそうな、大きなベッドの残骸が床に崩れ落ちており、
元は家具だった朽ちた木材が部屋中に散らばっていた。
恐らくこの部屋は妃の寝室だが、彼女が若い男達との奇妙な儀式を行っていた、という噂が本当かどうかはわからなかった。
更に奥のドアを開いた。
明るく彩られた壁は、昔はこの小さな寝室を際立たせていたことだろう。
さすがに当時の艶は消えうせていたが、それでも明るく陽気な様子は残っていた。
ドアが二つあり、左側のドアを開けてスイッチを押すと、壁の中から大きなトランクが出てきた。
の中に入っていたのは、ちょっと吃驚する様な……一種の鎧というかなんというか……そんな代物だった。
それは黒い皮製で、尖った金属の飾り鋲で縁取られたごつい作りのブラだった。
その使い道ははっきりしないが、もし相応しい人物が着用されたなら、ある種の魅力を醸しだす可能性があるようだった。
更に困ったことに、その奇妙なブラと共に箱の置くから黒くて長い鞭が出てきた。
果てさて、妃の寝室で一体こんなものを何に使っていたのだろう。想像するのは難くないが、やめておこう。
東側のドアを鍵を使い開いた。
歳月による崩壊がどれほど進んでいようと、その部屋の壮大さは失われていなかった。
ここは恐らく城の中で最大の寝室であろう。
城主がこの部屋を自分の私室として用いていたに違いない。
壁は壮大な手描きの壁画で飾られ、部屋の隅々まで職人の丁寧な手仕事で仕上げられている。
暗く荒れ果てていたが、かつてこの部屋を彩った美しい輝きは微かに残っていた。
向こう側の壁際には、支柱のついたベッドの残骸が崩れ落ちていた。
そして崩壊した家具は部屋中に散らばっていた。
まずは右側のドアを鍵で開いた。これで銀白色の鍵は使い道を終えた。
ドアを開いてみると、昔は書庫であり書斎であった。
この部屋の壁際には、朽ち果てた本棚と崩壊した本の残骸が積み重なっていた。
向かい側の壁際には机が崩れ落ちている。
殆どの本は形を成さないほど崩れていて、中を読むことは出来なかった。
それでもいくつかの本はタイトルを読むことが出来た。
「世界の歴史」「数学全書」
「2週間で7キロ痩せてその体型を保つ方法」「呪文について」
最後の二冊は何かの役に立ちそうだった。
しかし残念なことに両方ともかなり腐敗が進んでいるようだ。
まだ読める場所から手に入った情報と言えば、キャベツの面白い調理法だけだった。
更に面白い物はないかと机の残骸を探ってみると、机から壁の中に繋がっているワイヤーが見つかった。
罠が仕掛けられている可能性を考慮し、体を屈めてワイヤーを引いた。
すると、石壁の一部が抜けて戸棚が見つかり、宝石箱が隠されていた。
宝石箱を開けてみると、中には金色の鍵が一つと小さな本が入っていた。
本の状態は悪くなかった。
それはノートか日記のようだったが、判読できない不思議な暗号で書かれていた。
周囲を捜索したあと、これ以上この部屋で探索の必要はないと考え、王の私室へと戻った。
王の私室のドアを一つずつ開けると全て小部屋で、そのうちの一つは妙なボタンがあった。
そのボタンを押すと、壁が動き通路ができた。
通路を渡っていると右手に鉄格子が見える。
金銀銅鉄、そして羊の鍵、スペードの鍵がある。順番に試していくと羊の鍵で開いた。
鉄格子の先には箱があり、箱の中には山羊の頭で作ったと思われる奇妙な仮面が入っていた。
多少壊れ始めていたが、殆ど完全と言っても良いほど状態はよかった。
その仮面の横には、念入りに飾り立てられた金の短刀が置いてあった。
柄には数個の宝石が埋め込まれ、下部にはルーン文字が二つ刻まれていた。
箱の中身を取り通路の先を進むと、大きな門があった。
門には雄羊の紋章があり、鍵穴は他より大きく、何かを突き出す形になっている。
鍵ではないなら仮面を当ててみるが、仮面では門は開かない。そこで金の短刀を突き刺してみることにした。
この門は短刀が鍵穴代わりになっていたのだ。鉄格子が開いた。
正面と左右に分かれ道があり、左右の通路の突き当りには鉄格子がある。ここは開かないようだ。
階段を登ってみると、そこにはバルコニーになっており、吹き抜けから下の様子が見えた。
下には祭壇があるようだ。
下に下りて祭壇を調べてみると、ルーン文字と悪魔の小像が掘り込まれた巨大な石がせり上がっていた。
グロテスクな像は奇怪な儀式の様子を描き、真っ赤な染料がその表面を染めていた。
その残忍な彫り物は恐ろしい物語を伝え、その神聖ならざる意味に冷たい静けさを与えていた。
その彫像は、ひとたびは城に備わっていたケルト風の魅力を全く消し去り、
リアルで恐ろしい悪夢によって清らかさは全て失われてしまった。
汚れた石版を探ってみると、祭壇の中に押し込むことが出来るスイッチのような三つの特別なシンボルが見つかった。
そのシンボルはそれぞれ炎の宝珠、山羊の頭、杖だった。
出鱈目に押してみても、全く反応はない。
何をどの順番で何度押せばいいのかわからないこの状態で、ここで手をこまねいていても時間の無駄だ。
それよりも未踏破部分を探し出してそこから新たな情報を手に入れた方が効率がよい。
この下は恐らく、あの開かずの鉄格子周辺だろう。ここを動かせば開くのかもしれない。
なので、一階にある未踏破部分は置いておこう。二階は……全て探索しているように思える。
地下は更に奥深く潜る階段を除けば、歩ける範囲は全て探索し終わっている。
地下奥深くまで歩くことにした。
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